こんにちは。
さてあなたは、「楳図かずお」
という人物をご存知ですか?
(出典:Wikipedia)
御年83歳になる男性で、
たまにテレビで見かけることもありますよね。
(最近はあまり出てないのかな?)
この方、本業は何をされているか知ってます?
本業は『漫画家』さんです。
漫画家として主に活動されていた時期が
1970年代~1980年代なので、
いまの若い人たちは
たぶん知らないんじゃないかと思いますが…。
非常に素晴らしい作品を描かれています。
そこで今回は、
漫画家・楳図かずお先生が描かれた漫画で、
わたしの大好きな作品『漂流教室』
を紹介したいと思います。
TVで見かけるけったいなオッサンは、
実は偉大な漫画家だった!
ぜひ最後までお付き合いください。
漂流教室の作品データ
赤白のボーダーシャツを着て、
たまにTVに出ているけったいなオッサン
「楳図かずお」先生の代表作・漂流教室。
本作は「十五少年漂流記」を現代版にアレンジ。
SF要素も加味して仕上げられた
「SF少年サバイバル漫画」の金字塔です。
思いっきりホラーテイストな楳図先生の画風が、
その世界観を一層際立たせています。
今回は、そんな少年漫画史に燦然と輝く名作の
おすすめポイントを紹介していきますね。
【作品概要】
大和小学校の6年生・高松 翔くんは、
授業中にもの凄い爆音とともに
激しい地震に襲われます。
揺れはすぐに収まりましたが、
学校の外を見てみると…。
なんと辺り一面砂で覆われ、
荒れ果てた大地が広がっていたのです。
衝撃的なプロローグで始まる本作は、
人類の愚かさ・狂気・強さ・希望を
独特のタッチで描き切った、
壮大なSF感動大作です。
【作品データ】
作品名 | 漂流教室 |
作者 | 楳図かずお |
連載誌 | 週刊少年サンデー(小学館) |
連載期間 | 1972年(昭和47年)~1974年(昭和49年) |
単行本 | 全11巻(文庫版は全6巻) |
電子書籍 | あり |
漂流教室のおすすめポイント①(ストーリー)
では早速、漂流教室のおすすめポイントとして
ストーリーから紹介していきます。
が。
本作は、「全体のストーリー」と「話の展開」、
そして「ラスト(終わり方)」が一番のポイント。
つまり「ストーリーで読ませる漫画」なんですね。
そのためできれば事前情報なし(ネタバレなし)
で読むのがオススメ。
でもそうすると、
この記事を書く意味がなくなってしまうので…。
できる限りネタバレのないように、
序盤のストーリーを中心に紹介していきます。
ネタバレを期待していた方、ごめんなさいね。
【ストーリー①】
主人公・高松 翔くん(小学校6年生)は、
些細なことで母親とケンカをしてしまいます。
「もう二度と帰ってこないから!」
そう言い捨てて学校へ向かった翔くん。
しかし時間が経つにつれ
お母さんに悪いことしたな、帰ったら謝ろう…
という気持ちになっていきます。
ところが。
朝礼が終わった後のホームルームで、
「それ」は突然やってきたのです。
「みんな、教室が動いているぞ!」
「ドッ、ドッ、ドドド、ド~ッ!」
轟音ともに激しい揺れが教室を襲い、
悲鳴を上げる生徒たち。
突然のことに驚愕する生徒を
担任の先生が落ち着かせます。
「机の下に隠れるんだ!」
………。
しばらくすると音も揺れもおさまり
ホッとする翔くんたちでしたが。
そのとき校庭から
大きな悲鳴が聞こえてきました。
物語の冒頭は、
主人公の翔くんとお母さんの親子ゲンカ
のシーンから始まります。
些細なことで起こるよくある親子ゲンカの風景は、
本作を読む上での重要なポイント。
なぜならこの漫画のコンセプトの1つとして
「親子の愛(絆)」が挙げられるからです。
お互い親子ゲンカのことを深く反省し、
謝って仲直りしよう
と思っていた矢先に起きた大地震。
翔くんとお母さんの親子の絆は、
この後のストーリーに大きく関わってきます。
【ストーリー②】
校庭で悲鳴を上げたのは、
学校の先生の1人でした。
それを見た担任の先生は
校庭へ様子を見に行きます。
さらに教室の窓から、他の先生たちも
揃って校門へ駆けていくのを見た翔くんは、
何事かと思い教室を飛び出しました。
「何かあったんですか?先生!」
翔くんの問いかけに答えず、
ただ門の外を眺めているだけの先生たち。
その後ろから、
そっと外の様子を窺った翔くんは…。
「あっ!」
そこには、誰もが絶句してしまうような光景
が広がっていたのです。
学校の外の様子を写す一連のシーンは圧巻で、
見開きページを2ページ連続で描いています。
また、先ほどの大地震があった時(あった後)
の描写も圧巻のひと言。
楳図先生はホラータッチの人物描写が有名ですが、
白黒を基調とした緻密な風景描写も秀逸なんです。
そして、肝心の学校の外の風景はというと…。
上空には厚く垂れこめる灰色の雲。
目の前には地面を覆い尽くす一面の砂漠
が広がっていたのでした。
「一体何がどうなっているのか?」
この辺りから、
本作のストーリーにグッと引き込まれていきます。
【ストーリー③】
まずパニックに陥ったのは子供たちでした。
急いで校内に戻った翔くんは、
みんなに外の様子を告げます。
最初は半信半疑だった子供たちも、
窓から見える風景や屋上から見える風景に
言葉を失い、パニックに陥ってしまうのです。
子供たちが真っ先に考えたのは、
お父さん・お母さんのこと。
そして家に帰りたいということ。
周りの景色の変わりようを
目の当たりにした生徒たちは、
一斉に校門めがけて走り出します。
しかしそれを食い止めたのは、
大人である先生たちでした。
ここまでのストーリーで最大の謎となるのは、
「ここが、どこなのか?」ということ。
これは本作の第1話でも描かれていて、
実は小学校(学校の敷地)だけが
別の世界に移動しています。
ただ、そこがどこなのか?
というのはこの時点では描かれておらず、
それが判明するのは
もう少しストーリーが進んでからになります。
翔くんたちのいる世界がどこなのか?は、
この漫画の根幹に関わるため伏せておきますね。
【ストーリー④】
小学校がそっくりそのまま別の世界に移動した
ということは、その敷地内にいた人間も
みんな別の世界に移動したことになります。
つまり、1年生から6年生まで
幅広い年齢の子供たちが含まれていることに。
そこで子供たちを安心させるため、
先生たちは「ある嘘」をつくことにしました。
- ここは我々が住んでいた場所とは違う土地。
- なぜいきなり違う土地に来てしまったのかは分からない。
- いま一生懸命調べている最中。
- 放送室の無線から日本のニュースが流れてきている。
- お父さんとお母さんも生きている。
- みんなを探している。
実際には、電気・ガス・水道は使えず、
電話はもちろん電波の類いも一切入らない場所
にいるにもかかわらず。
そして現時点では、
この学校にいる人間以外の生死は不明
であることも伏せておいたのです。
…が、それも長くは続きませんでした。
なぜならこの後、
ある1人の男性を残して
大人が全員死んでしまうから。
こうして、
子供たちだけの「命懸け」のサバイバル生活
が幕を開けます。
漂流教室のおすすめポイント②(人間の闇)
ここまでが、「漂流教室」の序盤のストーリー。
本作的なサバイバル漫画としての真骨頂は、
この後から描かれます。
残された子供たちが、知恵と勇気と団結力で
この世界を生き抜いていく姿は、
この作品の大きな見どころ。
しかし本作は、
少年サバイバル漫画であると同時に、
ある種の「パニック漫画」でもあるんです。
いくら子供たちだけの生活と言っても、
きれいごとだけでは生きていくことができません。
そこには極限のパニック状態に陥った子供たちの
恐怖・怯え・悩み・猜疑心・独占欲・仲間割れ
妬み・企み・暴力などの「闇の部分」が
必ず存在します。
特に「水と食料」。
水と食料については、比較的序盤から
トラブルが起こるように描かれており、
老若男女問わず、人間誰しもが持つ
「本能としての食欲」という部分を利用した
心理描写は非常にリアル感があります。
加えて、絶対に外せない「権力争い」。
子供だからと侮ってはいけません。
- 上に立つ者
- それに従う者
- 支援する者
- 反抗する者
- 長いものに巻かれる者 など
十人十色な子供たちの様子が、
より一層のリアル感を醸し出しています。
こういった、上っ面だけではない人間の心理を
容赦なく描き切っているところに、
この漫画のスゴみというか、
楳図先生のスゴさがあるのでしょう。
人間の負の部分(心理)を描いた作品って、
読者の共感を呼びやすいんですよね。
そして、楳図先生のホラータッチの画風は、
ホントにこの漫画の世界観を
際立たせてくれています。
さらに、けっこう簡単に
子供たちが死んじゃったりするのも特長。
「死のリアルさ」という点でも、
読者に迫るものがあります。
ただそんな中。
ひとりだけ異彩を放っている人物がいます。
それが主人公の「高松翔くん」。
翔くんは、
この漫画の「良心」であり
「光」でもあるのです。
漂流教室のおすすめポイント③(キーキャラクター)
勉強はさほど出来ないものの、
正義感と責任感で出来ているような少年・翔くん。
子供たちの初代「総理大臣」となった翔くんは、
抜群のリーダーシップと行動力で
みんなを引っ張っていきます。
本作「漂流教室」は、最初から最後まで
主人公の翔くんを中心に描かれている作品。
なので翔くんが
最もポイントとなるキャラクターです。
しかし!
本作には、翔くん以外にも
物語の重要なカギを握るキーキャラクターが存在。
それが「西あゆみ」ちゃんと「小野田勇一」くん。
最後にこの二人のキーキャラクターを紹介して
終わりたいと思います。
翔くんより1つ年下の西あゆみちゃんは、
足が不自由(松葉づえ使用)で物静かな美少女。
(©楳図かずお/漂流教室 第2巻)
本作のメインヒロインではなく、
あくまでも脇役のひとりに過ぎません。
ちなみにメインヒロインは、
川田咲子(かわだ さきこ)という、
翔くんと同じクラスの女の子です。
そんなチョイ役の域を出ない西さんは、
ストーリーの進行上、
非常に大きな役割を担っています。
なぜなら。
もし彼女がいなければ、
翔くんは「最低でも2回」死んでいるから。
彼女は「ある不思議な能力」を持っており、
その能力で翔くんをピンチから救います。
そしてそれは、本作のコンセプトの1つである
「親子の絆(翔くんとお母さん)」に
大きく関わってくるのです。
翔くん・お母さん・西さんの三者が
どのように関係してくるのかは、
ぜひ本編でお確かめください。
ただですね。
そんなスゴイ力を持っている割には
ヒジョ~に雑な扱われ方
をされてしまうキャラでもあって。
ヒロインになり切れない「脇役」という
悲しい宿命を背負っている女の子でもあります。
続いてのキーキャラクターは、
無邪気な三歳児・小野田勇一くん(ユウちゃん)。
(©楳図かずお/漂流教室 第2巻)
翔くんたちが大地震に見舞われたその日・その時。
たまたま校庭で遊んでいたユウちゃんも、
一緒にこの世界に来てしまったのです。
※ この頃の小学校は、誰でも自由に出入りできたんですよ。
登場する子供たちの中で最も幼いユウちゃん。
彼もまたストーリーに影響する
大きな役割を2つ与えられています。
- ユウちゃんのお陰で「この世界がどこなのか?」が判明する
- この無邪気な三歳児が最期には翔くんたちの「希望」になる
【余談】
個人的に本作のラストは非常に良い終わり方
だと思っていまして。
どこがどうスバラシイのか
詳しく説明したいのです。
そこにユウちゃんがどう絡んでくるのかも…。
でもそれだと、単なるネタバレサイトと同じ
になってしまいうので…。
ガマンして書きません!
(こちらもぜひ本編で確認してくださいネ)
このように、主人公の翔くん以外にも
ストーリーの進行上重要なカギを握る
キャラクターが2名存在しています。
あゆみちゃんとユウちゃんに共通する点は、
サバイバル生活をしていくうえで
「足手まといになる」キャラクターであること。
あゆみちゃんは足が不自由なため、
松葉づえが無いと歩くことができません。
そのため何をするにも
他人より一歩も二歩も遅れをとることになり、
そのたびに翔くんたちが
手を差し伸べなければならないのです。
また、ユウちゃんは
三輪車に乗るしか能のない三歳児。
こちらも足手まとい以外の何者でもありません。
そんな足手まといにしかならない2人を、
あえて重要なキーキャラクターとして設定した
点に、楳図先生の優しさを感じてしまうのです。
そして。
この2人を絶対に見捨てない主人公の翔くん。
ホント立派な本作の「良心」としての役割を
果たしています。
以上が、極力ネタバレなしで書いた
本作のおすすめポイント。
上手く伝わったでしょうか?
それもこれも、できるだけ素の状態で
「漂流教室」という名作を楽しんでもらいたい
という配慮から。
何卒ご了承ください。
でもですね。
本作の見どころは、まだまだ他にもあります。
子供たちが知恵を振り絞り力を合わせて
困難を乗り越えていくシーンなど。
人間の「闇」の部分じゃない「光」の部分も
おすすめポイントと言えますね。
そして迎える最終回。
ラストシーンをあなた自身の感性で受け止めれば、
「あ~、良いマンガ読んだな~」と
きっと思ってもらえるに違いありません。
さらに「楳図かずお」なるけったいなオッサンが、
実は偉大な漫画家だった!
と思い知らされるでしょう。
そんな楳図先生の代表作「漂流教室」は、
電子書籍化されています。(文庫版)
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