中坊だったころのわたしが、
当時のサンデーで一番好きだった漫画
「ぶっちぎり」
を紹介します。
仲の良い友人たちの中で唯一の
サンデー読者だった清水くんと、
この漫画のへたくそなキャラ絵を描いて
盛り上がっていたのは懐かしい思い出。
ただ小学生時代から愛読していたサンデーも、
この漫画が終わったくらいから
あまり読まなくなってしまいましたね。
そういう意味でも、思い出深い作品です。
今回は、そんな「ぶっちぎり」の
おすすめポイントをご紹介。
人気マンガの定番、
「不良」と「野球」でぶっちぎります!
ぶっちぎりの作品データ
【作品概要】
元暴走族のリーダー・高原 陣が、
友人やライバルたちとの出会いを経て、
甲子園を目指すヤンキー野球漫画。
ただし単なる「不良 + 野球」
を描いた作品ではなく、
過去との決別、そして友情を
前面に押し出した王道少年漫画でもあります。
【作品データ】
作品名 | ぶっちぎり |
作者 | 中原裕 |
連載誌 | 週刊少年サンデー(小学館) |
連載期間 | 1987年(昭和62年)~1989年(平成元年) |
単行本 | 全14巻(文庫版:全7巻) |
電子書籍 | あり |
ぶっちぎりのおすすめポイント(野球との出会い①)
本作「ぶっちぎり」は、
伝説的な暴走族チーム・銀狼(ぎんろう)の
元リーダー・高原 陣(たかはら じん)が、
野球を通じて「友情」と「現在を生きる」
ことを体現するスポーツ漫画です。
(©中原裕/ぶっちぎり)
すでに銀狼というチームは解散したものの、
中学時代はケンカとバイクに明け暮れた陣くん。
中学を卒業した彼は、
白滝学園という高校へ入学することになります。
野球とは無縁のヤンキー生活を
送っていた陣でしたが、
入学式早々、ある出来事により
剛腕ピッチャーとしての才能を垣間みせ
周りを驚かせます。
ちなみに白滝学園は野球の名門校ではありません。
※ 過去、地区予選の決勝まで進んだことがあるという程度。
(©中原裕/ぶっちぎり)
しかし本人は、
野球に関しては全くのド素人で興味もなし。
周囲の喧騒もよそに
相変わらずのケンカ三昧の日々を続けます。
そんなある日。
五十嵐という少年と再会。
桜工業の野球部に所属する五十嵐は、
元銀狼の特攻隊長だった男。
暴走族をやっていたころから
野球をしていた五十嵐くん。
自ら起こした暴行事件により
野球から遠ざかっていましたが、
高校入学を機に、
好きな野球を再び始めたのでした。
(©中原裕/ぶっちぎり)
子供の頃からの夢だった甲子園を
本気で目指すという五十嵐。
それを聞きよろこぶ陣に、
五十嵐がこんなことを問いかけます。
「高原さん、ケンカしてて楽しいですか?」
(©中原裕/ぶっちぎり)
ぶっちぎりのおすすめポイント(野球との出会い②)
五十嵐の野郎、つまんねえこといいやがって…。
高校に入学してからも、
バイクに乗りケンカをするだけの日々。
自分の中で燻っているものに気付いていた
陣くんは、五十嵐のひと言を受けて、
何となく白滝学園野球部の練習を
見に行ってみます。
陣の野球の才能を目撃していた野球部員たちは、
見学にきた陣くんを野球部に勧誘。
一方で、学校の「問題児」
としても有名になっていた彼を
こころよく思わない野球部員もいました。
もともと野球の経験もなく、
五十嵐のひと言があったから
見に来てみただけ。
甲子園について熱く語る部員たちを尻目に
グラウンドを後にします。
(©中原裕/ぶっちぎり)
「どいつもこいつも、なあにが甲子園だよ…」。
数日後、問題ばかり(他校との暴力沙汰)
起こす陣について、
教師たちの間で処分が検討されることに。
退学処分を主張する教頭に対して、
野球部の顧問をしている教師が待ったをかけます。
野球部顧問の教師は、陣を退学処分にする前に、
野球部で預からせて欲しいと申し出るのです。
こうして、本人の意思に関係なく強制的に、
陣くんは野球部に入部することになるのでした。
ぶっちぎりのおすすめポイント(野球との出会い③)
野球部に入部させられたことを知ったものの
当然のことながら、
まったく練習には顔を出しません。
そんな様子を見かねた野球部の顧問は、
ヤクザのような風貌をした野球部OBの現役刑事を
陣くん専属のコーチとして招聘します。
ケンカなら誰にも負けない自信のあった陣を、
一撃でノシてしまうほど強いヤクザデカコーチ。
ただ速い球が投げられるだけで
野球の基礎もルールも身に付いていない彼は、
このコーチに
徹底的に鍛え上げられることになります。
(©中原裕/ぶっちぎり)
しかし、それでも
本気で野球に取り組もうとしない陣くん。
五十嵐の影響で野球に興味は出てきたものの、
まだ自分から本気で取り組もう
という気にはなっていないのです。
そしてこの後。
「ある男」との出会いが、
燻っていた心に火を付けることになります。
(©中原裕/ぶっちぎり)
高校No.1スラッガーと名高い
この大男との真剣勝負(野球の)で
完膚なきまでに叩きのめされた陣は、
ヤクザデカコーチの元を訪れ、
こう告げるのでした。
「野球だ…、野球教えてくれ」
(©中原裕/ぶっちぎり)
ぶっちぎりのおすすめポイント(友情と過去との決別)
こうして陣くんは、
野球にのめり込んでいくことになるのですが。
当初は、先ほど登場した高校No.1スラッガ―
神堂(しんどう)に勝つことだけを目的に
野球に取り組みます。
「甲子園出場」という高校球児の目標は、
まったく頭の中にありません。
ケンカであれ野球であれ、
負けっぱなしで終わるのがイヤ。
という「男の意地」が
野球をやる原動力となっています。
なので、神堂との対決が終わった後は、
何とかして練習をサボってやろうと企む
いつもの陣くんに逆もどり。
本人が「甲子園に行きたい」と思うのは、
最後のほうになりますね。
陣が野球を始めてから
甲子園を目指すまでの姿が描かれているのは、
高校1年の夏から高校2年の夏までの
1年間だけなんです。
それでも、神堂くんとの勝負や
五十嵐率いる桜工業との試合など、
序盤から野球の見どころは満載。
そのあと、
春の選抜大会の不祥事による出場辞退をへて、
高校2年の夏の戦いで
本作の高校野球は幕を閉じます。
(©中原裕/ぶっちぎり)
そして高校野球と同時に進行するのが、
本作のもうひとつのみどころ、
「暴走族同士の抗争」です。
「銀狼」という暴走族は、
もともとバイクで走ることが好きな連中が
集まったチームで、
「風間オサム」という男が結成しました。
現在の風間は、
プライベートでヨーロッパを転戦する
バイクレーサーとして活躍。
その走りに魅せられた連中が集まって
初代・銀狼が成り立っていたのです。
その初代・銀狼が解散したあとに
チーム名を引き継いだのが
陣たちのチームというわけです。
(©中原裕/ぶっちぎり)
ですから陣は「二代目の銀狼リーダー」であり、
初代の銀狼に属していたわけでもありません。
ちなみに、初代・銀狼が解散した経緯は
外伝としてコミックスに収録されています。
風間率いる初代・銀狼は
150人を超す大所帯のチームでしたが、
陣が率いた二代目・銀狼は
わずか「7人」だけのチーム。
それでも、たった7人で100人を超すチームを
ボコボコにしてきたことから
「伝説の暴走族」
と呼ばれるようになったのです。
ただし!
ココが重要なポイントでして、
本作では、
銀狼は「過去のこと」
として描かれます。
陣や五十嵐は、元銀狼のメンバーであったことを
ひけらかすこともなく、
むしろ完全に過去のこととして葬り去りたい
と考えているんですね。
(©中原裕/ぶっちぎり)
しかしそれを、周りの連中が許しません。
いま現在も暴走族をしている連中にとっては、
銀狼は憧れであり、敵でもあります。
元銀狼のリーダーに勝てば名を上げられる。
元銀狼のリーダーに勝って新しい銀狼を作る。
そして勝手に、
二代で銀狼というチームを終わらせてしまった
陣に対して恨みを持つ男たちが、
「銀狼連合」という新しいチームを作り、
動き出すのでした。
(©中原裕/ぶっちぎり)
この漫画の本筋はあくまでも「野球」
にあるのですが、
暴走族同士の抗争が
要所要所でストーリーに関わってきます。
あるときは陣が狙われ、
ある時は五十嵐が、
またある時には他の仲間たちが
ターゲットとして狙われます。
そのたびに陣や他の仲間たちは、
危険をかえりみず
敵の懐に飛び込んで行くことになるのです。
この辺りは、陣くんをはじめとする
元銀狼メンバーの「友情」が描かれていますね。
ただ面白いのは、陣くんの心境の変化でして。
当初は「昔の仲間 > 野球仲間」だったものが、
後半になるにつれ
「昔の仲間 ≒ 野球仲間」へと変わっていきます。
(©中原裕/ぶっちぎり)
これは昔の仲間に対する友情が薄まった
ということではなく、
今の野球仲間との友情が高まった
ということを意味します。
だんだんと陣くんが野球にハマっていく様子が、
こういった描写からも
分かるようになっているのです。
元銀狼という肩書は、
もう今の自分たちには必要ない
と思っている陣くんたち。
対して、「銀狼」という名前にすがり
固執する周りの暴走族たち。
迎える最終局面では、この暴走族の抗争に
「野球」で決着をつけることになります。
銀狼という過去の遺物と決別するために、
ケンカではなく野球を用いるところは、
いかにも少年漫画ですね。
でもまぁその前に、
派手なケンカもするんですけど…。
(©中原裕/ぶっちぎり)
こうして本作の高校野球と
暴走族の抗争は終わりを告げます。
夏の高校野球が終わったあと、
気の合う仲間でツーリングをする陣たち。
そこには、
「現在」を生きている
清々しい若者たちの笑顔がありました。
「高原さん、これから野球どうすんですか?」
「続けてみんのも悪かねえかもな!」
ということで今回は、
昭和の不良&野球マンガの傑作
「ぶっちぎり」を紹介しました。
むかし大好きな作品だったので、
たくさんの見どころを詰め込もうと、
いろいろ書きすぎてしまいましたが。
「高原陣」という少年をめぐる
不良&野球のストーリーは、
やっぱり何回読んでも
惹かれるものがあります、男として。
古き良き時代の不良たちと
人気マンガの定番・高校野球を
うまくストーリーに絡めた傑作漫画
「ぶっちぎり」。
不良モノと野球モノが好きな方に、
ぜひオススメしたい一作です。
さて、そんな本作「ぶっちぎり」は
電子書籍化されています。
わたしがふだん利用している電子書籍通販サイト
「ebookjapan」で試し読みが可能。
「ぶっちぎり」に興味を持たれた方は、
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