以前の記事で「あだち充作品のおすすめBEST10」
と題して、人気漫画家・あだち充先生の作品を
紹介しました。
今回は、そこで取り上げた「ナイン」を紹介します。
「ナイン」を取り上げることにしたのは、
本作があだち先生の描く少年漫画の中では
かなり古い作品であり、後のあだち充漫画の原点に
なったとも言える傑作だから。
全5巻という短い作品で、
あだち充という漫画家さんを知るには
ピッタリの作品でもあります。
ただし。
今回紹介するのは、その「ナイン」のアニメ版。
こちらもかなり古いアニメですが、
原作の雰囲気をそこなわずに作られた
青春ラブストーリーの傑作と言ってイイでしょう。
令和の世に、昭和の隠れた名作アニメを楽しむのも
オツですよ。
アニメ版ナインは無料で視聴することができます。
無料で観る方法は記事の最後に紹介しますね。
ナインの作品データ
【作品概要】
中学陸上短距離記録保持者の主人公と
その友人で中学柔道県大会個人優勝者、
全国中学野球優勝投手らが、
甲子園を目指して奮闘する「青春ラブストーリー」。
もう一回言いますね。
甲子園を目指す
「青春ラブストーリー」
です。
【作品データ】
作品名 | ナイン |
作者 | あだち充 |
メディア | TVアニメ(スペシャル) |
監督 | 杉井ギサブロー |
製作 | 東宝、グループ・タック、フジテレビ |
話数 | 全3話 |
放送期間 | 1983年(第1話 約73分) 1983年(第2話 約66分) 1984年(第3話 約73分) |
ナインのストーリー&登場人物
それでは「ナイン」のストーリーと
主な登場人物を紹介します。
本作の構成を大まかに示すと、こんな感じ。
- 主人公たちが甲子園を目指す「野球パート」
- 登場人物たちが織りなす「恋愛パート」
そこで本作を「野球パート」と「恋愛パート」の
2つに分けて、それぞれのストーリーや登場人物を
紹介していきたいと思います。
まずは「野球パート」から。
アニメ版「ナイン」は、
原作マンガにとても忠実に作られています。
アニメ版のオリジナルストーリーや
キャラもなく、内容はまったく同じ。
なのでここからは、
原作マンガをベースに紹介を進めていきます。
ストーリー&登場人物①(野球パート)
「ナイン」の主人公は、
新見克也(にいみ かつや)という少年。
新見くんが友人の唐沢進(からさわ すすむ)とともに
この春入学する青秀高校野球部の試合を
見に行く場面から本作は始まります。
ところが。
野球場に向かう途中の電車で、
痴漢の現場を目撃してしまいます。
うつむいたまま痴漢の被害にあっている女の子を
助けようとする二人。
でしたが…。
なんと、おとなしそうなその女の子が
「キッ!」と痴漢を一睨み。
自ら撃退してしまうのでした。
(©あだち充/ナイン)
振りむいた彼女の美しさと気丈な態度に驚く
新見くんと唐沢くん。
しかしこの後、さらなる驚きが。
野球場に着いた二人は、
そこで先ほどの痴漢の「被害者」と「加害者」に
ふたたび遭遇。
この二人も青秀高校野球部の試合を
見に来ていたのです。
野球の試合は青秀高校のコールド負け。
痴漢の被害者である女の子は、
コールド負けを確認すると
涙を受かべながら立ち去ります。
そんな彼女の姿を見た新見くんと唐沢くんは、
「もう二度と彼女を泣かせたりはしない!」
「彼女にはぜったい笑顔が似合う!」
と、青秀高校野球部に入部して
美しくも気丈な彼女を「笑顔」にすることを
誓うのでした。
そして、
この数奇な出会いが「運命」であることに気づくのは
二人が青秀高校に入学してからなのです。
こんなプロローグで始まる本作の野球パート。
主要なキャラは上で登場した4人になるため、
ここではその4人のキャラクターを紹介します。
まずは主人公の新見くん。
彼は中学陸上・短距離では敵なしを誇る
快速ランナーです。
(©あだち充/ナイン)
あだち漫画には珍しくピッチャーではない主人公。
野球部に入部してからは、
不動の一番・センターとして活躍します。
一応、父親が元高校球児で
選抜大会で優勝しているそうですが、
本編とはあまり関係ありませんね。
なおアニメ版の声優は、あの「古谷 徹」さん。
一番、センター、アムロ。
続いては、新見くんの親友・唐沢くん。
柔道の県大会で優勝した経歴を持つ猛者です。
(©あだち充/ナイン)
そのパワーを活かしてさぞかし活躍するだろう
と思いきや、野球センスには恵まれなかったよう。
あだち漫画には欠かせないポッチャリ系名脇役ですが、
キャッチャーではなくライトです。
アニメ版の声優は、名優・富山 敬さん。
ちびまる子ちゃんの友蔵の声をやっていた方ですね。
個人的には、タイムボカンのナレーター
としてのほうが印象があります。
次に、痴漢の加害者である
倉橋 永二(くらはし えいじ)くん。
彼も同じ青秀高校に入学する生徒で、
全国中学野球大会で優勝したチームのエースだった男。
(©あだち充/ナイン)
実は、倉橋くんはある理由により野球をやめており、
野球ができないストレスから痴漢をしてしまった
という情けない野郎…。
だったのですが。
ストーリーの序盤で自分を取り戻し、
再び野球を始めてからは
エースとして大車輪の活躍をみせます。
声優は、塩沢 兼人さん。
若くして亡くなられましたが、
個性的な声優さんで大好きでした。
同じあだち先生原作のアニメ「みゆき」で、
村木というチョイ役をやってまして。
その時の「わかまつ~」と呼ぶ鼻にかかった言い方が
忘れられません。
最後は、本作のヒロインで痴漢の被害者でもあった
中尾 百合(なかお ゆり)ちゃん。
(©あだち充/ナイン)
百合ちゃんは青秀高校野球部監督の娘さん。
彼女が試合後に流した涙は、
父親のチームが無残にもコールド負けを
喫してしまったからだったんですね。
新見くんたちと同じく青秀高校に入学し、
野球部のマネージャーになります。
アニメ版の声優は3人いて、次のとおり。
- 第1話 … 石原 真理子
- 第2話 … 倉田 まり子
- 第3話 … 安田 成美
いま思うと、かなり豪華なキャスト。
安田 成美さんは、とんねるず・木梨さんの奥さん
なのでご存知の方も多いかと思いますが、
石原 真理子さんとか倉田 まり子さん、
知ってますかね~。
なお、倉田 まり子さんは本作のテーマ曲も歌っていて、
EDの「真夏のランナー」はホント名曲です。
本作の野球パートでは、
この4人を中心に彼らが甲子園を目指す3年間が
描かれています。
と言っても、青秀高校野球部はかなりの「弱小」。
いくら中学野球のエースがいても、
主役級の二人は野球未経験者。
中学陸上界のエースと柔道部のエースは、
果たして甲子園に出場することができるのでしょうか?
そして、百合ちゃんを「笑顔」にすることが
できるのでしょうか?
ストーリー&登場人物②(恋愛パート)
さて続いては、本作のもう一つのストーリーである
「恋愛パート」です。
こちらは主人公の新見くんとヒロインの百合ちゃんの
「青春ラブストーリー」を中心に描かれます。
ただし。
「ラブストーリーに試練や障害はつきもの」
ということで、もう一人重要な人物が登場します。
それが、安田 雪美(やすだ ゆきみ)ちゃん。
雪美ちゃんは、新見くんに想いを寄せる
百合ちゃんのライバル。
(©あだち充/ナイン)
彼女も青秀高校の新入生なのですが、
陸上部に所属するため
「野球パート」とは関係がありません。
ただ、本作のラブストーリーを構成するうえで
とても重要な準ヒロイン役を演じることになります。
アニメ版の声優は、坂本 千夏さん。
個人的に坂本さんと言えば「フクちゃん」。
でも有名なのはトトロのメイちゃんですかね。
一方の新見くんにも、
百合ちゃんに想いを寄せるライバルが登場。
それが、山中 健太郎(やまなか けんたろう)
という百合ちゃんの幼なじみ。
こちらもあだち充作品には欠かせない
幼なじみキャラです。
(©あだち充/ナイン)
ちなみに山中くんは、
「恋」だけでなく「野球」のライバルとしても
新見くんの前に立ちはだかります。
アニメ版の声を担当したのは、神谷 明さん。
神谷さんは説明不要ですよね。
そのほか、前述した倉橋くんの恋愛模様は
ほぼ描かれませんが、
唐沢くんは中盤と最後のほうで
ちょっとした恋のエピソードが描かれます。
そのお相手が、こちら⤵の高木 洋子ちゃん。
(©あだち充/ナイン)
洋子ちゃんの声優さんは、鶴 ひろみさんでしたね。
鶴 ひろみさんも説明要らないでしょ。
一番好きだったのは、初主演作のペリーヌ。
富山さんや塩沢さんと同じく、
若くして亡くなった名優さんです。
で、気づきました?
野球パート・恋愛パートともに
4人の主要キャラで構成されていることに。
- 両方のパートに共通のキャラ(2名)
- 新見くんと百合ちゃん
- 野球パートの主要なキャラ(2名)
- 唐沢くんと倉橋くん
- 恋愛パートの主要なキャラ(2名)
- 雪美ちゃんと山中くん
このような分かりやすい構成で物語が進んで行くのも、
さすがあだち先生といったところでしょうか?
※ もちろん計算ですよね。
そんな「野球パート」と「恋愛パート」で構成される
本作・ナイン。
最後におすすめポイントとして紹介したいのは、
やはり恋愛パートで描かれる
「あだち充カラー満載の青春ラブストーリー」
になります。
ナインのおすすめポイント(極上の青春ラブストーリー)
本作を観ていただければ分かりますが、
このアニメの大きな特長として次の点が挙げられます。
野球以外のエピソード(高校生活や日常生活)が、
かなり多く描かれている。
主人公たちが
甲子園を目指しているにもかかわらず、です。
それらの多くは「恋愛」にまつわるエピソード。
だから本作は、野球アニメではなく
「恋愛アニメ」として観たほうが断然面白いんですね。
それも「極上の青春ラブストーリー」として。
あだち先生の作品を評する際に、
よく「ラブコメ」という表現が使われますが、
先生の作品は「コメディ」じゃありません。
登場人物たちの恋愛模様を爽やかに描く
「青春ラブストーリー」が、あだち先生の真骨頂。
代表作である「タッチ」や「H2」も
野球漫画じゃありませんよ。
青春ラブストーリーです。
ラブストーリーを軸に、若者の青春、スポーツなど
他の要素を肉付けして出来あがったのが、あだち作品。
そして、その原点とも言えるのが
本作「ナイン」なんですね~。
あだち先生の作品が「ラブコメ」と評されるのも、
登場人物たちの恋愛模様を
「コメディっぽく」描いているからで、
その要因というか魅力というかは、
次の2つにあります。
【あだち充漫画のラブストーリーの魅力】
「偶然」と「誤解」
「偶然」と「誤解」から生まれるラブストーリーが、
あだち先生の作品を
ある意味「コメディっぽく」見せているのです。
例えば、「野球パート」の紹介で述べたように、
主人公の新見くんは百合ちゃんの笑顔が見たいから
という動機で野球を始めます。
これは言い換えれば、新見くんが百合ちゃんに
「一目惚れ」した証拠でもあります。
対して、百合ちゃんのほうはというと…。
実は百合ちゃんも、
以前から新見くんのことが好きだったのです!
「偶然」にも!
※ このエピソードは、作中で描かれています。
さらにそのエピソードの中で、逆に新見くんは
「百合ちゃんは山中くんのことが好きだ」
と「誤解」しちゃうんですね~。
きっかけは、百合ちゃんが落としてしまった定期入れ。
それを山中くんが拾うのもまた「偶然」なんですけど。
こういう「偶然」や「誤解」は、
ラブストーリーにはありがちな展開ですが、
あだち先生はその展開の描き方が上手いので、
コメディとも受け取れてしまうのでしょう。
また、偶然と誤解が招くラブストーリーは、
後の多くのあだち作品にも受け継がれており、
特に「ラフ(ROUGH)」という作品に至っては、
「偶然と誤解だけで成り立ってんじゃねーの?」
と言ってもイイくらいの
「あたち風ラブストーリー」になっています。
本作にも、偶然と誤解から生まれる
ラブストーリーはもちろん、
ちょっとほろ苦い恋愛や
甘酸っぱい恋模様なども描かれ、
まさに「青春」という感じのラブストーリーが
展開されています。
それでもやっぱり一番の見どころは、
新見くんと百合ちゃんの「青春純愛ラブストーリー」。
変にベタベタしない爽やかな恋愛は、
きっとあなたの心も爽やかに潤してくれるでしょう。
※ 最後のこのシーン⤵も大好きです。
(©あだち充/ナイン)
ということで今回は、
あだち充先生原作のアニメ「ナイン」を紹介しました。
恋に勉強にスポーツに、
まさしく「青春を謳歌している」という表現が
ぴったりな作品。
青春時代なんてとうの昔に過ぎてしまった世代にも、
青春真っただ中の世代にも、
どちらにも楽しんでいただきたい
昭和の名作青春ラブストーリーです。
もしあなたが「偶然」当ブログを見つけたとしても、
野球漫画かと「誤解」してたどり着いたとしても、
それも何かの「縁」。
その縁を感じられた方は、
ぜひご自身の目で「ナイン」の面白さを
確かめてくださいね。
なお最初にお話ししたとおり、
本作「ナイン」は無料で視聴することができます。
その方法は、動画配信サービス「U-NEXT」の
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なお、本ページの情報は
2021年3月時点のものです。
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