今から50年以上前に
連載が始まった
昭和の傑作料理漫画
「包丁人味平」を紹介します。
年代的に
リアルタイムでは読んでいませんが
ワタシには兄貴がいましてね、
歳が6つ離れているんです。
で、この兄貴が
結構なマンガ好き野郎でして
本作「包丁人味平」も
全巻揃えていたんですね~。
ということで今回の記事では
たぶん知らない人のほうが多いであろう
「包丁人味平」を考察してイキます。
1970年代の古い漫画。
でも
メチャメチャ面白い!
ですよ♪
【包丁人味平】作品データ
名料理人を父に持つ
主人公・塩見 味平が
料理人として成長していく姿を描く
「料理漫画」。
Wikipediaによると
「史上初の料理・グルメ漫画」
だそうで。
それだけでも
「名作」と呼ぶに
ふさわしいのですが…。
本作のおもしろさは
別のところにあるんです。
| 作品名 | 包丁人味平(ほうちょうにんあじへい) |
| 作者 | 作:牛次郎、画:ビッグ錠 |
| 連載誌 | 週刊少年ジャンプ(集英社) |
| 連載期間 | 1973年(昭和48年)~1977年(昭和52年) |
| 単行本 | コミックス版:全23巻、ワイド版:全12巻 |
| 電子書籍 | あり |
【包丁人味平】考察 ① 実は「バトル」漫画です
天下の
週刊少年ジャンプで
人気を博した名作
「包丁人味平」。
タイトルの「包丁人」という響きから
おのれの腕と包丁1本で料理界を渡り歩く
「さすらいの料理人」が活躍する漫画
というイメージを持つかもしれません。
確かに
それも間違いではないのですが…
チョット違います。
本作は
主人公である料理人・味平が、
誰もが食べられる
安くてうまい料理を
作ることを目的に
さまざまな体験を通して
成長していく物語です。
本編では
たくさんの料理や食材などが登場し
創意工夫を凝らしたアイデア料理も登場。
でも基本的には、主人公・味平が
周りの人たちに支えられながら
料理人として成長していく姿を描く
「ヒューマンドラマ」が軸になっています。
このように書くと
えっ?
ソレって面白いの?
と思われそうですが…。
大丈夫。
ジャンプで連載され
コミックス23巻まで続いた作品ですよ。
ソレだけじゃ
終わりません。
ということで次から
ストーリーやキャラ紹介も交えつつ
「包丁人味平」の面白さを
考察していきたいと思います。
※ 以下、一部ネタバレあり
主人公&ストーリー
主人公・塩見味平は
一流料亭の板前である
塩見松造を父に持ち、
小さい頃から
父親の背中を見て
育ってきました。
しかし。
一流料亭の板前であった
父親を見てきたことが
逆に「大衆料理」への興味を
抱かせることになります。
そして、中学を卒業した味平は
洋食屋「キッチン・ブルドッグ」で
見習いとして働き始めるのでした…。
余談ですが
1970年代の漫画なので
当初はかなり
「劇画タッチ」のキャラ絵。
(©牛次郎、ビッグ錠/包丁人味平)
でも
後半になればなるほど
「漫画タッチ」のキャラ絵に
変わっていきます。
※ 時代を感じますね~
(©牛次郎、ビッグ錠/包丁人味平)
さて
キッチン・ブルドッグで
見習いコックとして
修業を始めた味平くん。
いくら父親が一流の板前でも
彼自身は
中学を卒業したばかりの普通の少年。
まずはキッチン・ブルドッグの
厳しくも優しいチーフ・北村や
ベテランコックの留さんなどに
料理人のイロハを叩きこまれていきます。
そんな折。
厨房を預かるチーフの北村が
私用で3日間
店を空けることになりました。
その代理として
「仲代」という料理人が
チーフとして
店を仕切ることになります。
3日間限定ではあるものの
厨房を仕切るチーフとして
派遣されてきた仲代は
北村チーフのやり方を「全否定」。
さらには
キッチン・ブルドッグの
『命』とも言える
「ソース」を捨ててしまうのです。
北村チーフが
大事に育ててきたソースを
捨ててしまった仲代に
激怒した味平。
見習いの分際で
仲代に食ってかかるのでした…。
と、
ここまでが本作のプロローグ。
この後から
包丁人味平の
『本領』が発揮されます。
単なる「料理漫画」ではありません
北村チーフとキッチン・ブルドッグの
大切なソースを捨ててしまった仲代に対して
何も言うことができない他のコックたち。
そんな先輩たちを尻目に
仲代に食ってかかる見習いコックの味平。
生意気な口を利く味平に対して
仲代は、
「包丁試し」という3本勝負を
仕掛けるのです。
(©牛次郎、ビッグ錠/包丁人味平)
「包丁試し」とは
古くからある
料理人同士の勝負の方法。
この勝負を持ちかけられたら
断ることはできず、もし断ったら
料理人を辞めなければならない、
そういう「料理の決闘方法」。
具体的には
次の3つで勝負を決します。
①「氷祭り」
⇒ 10分間で氷の彫刻を造る
②「火祭り」
⇒ アイスクリームのフライを作る
③「刃物祭り」
⇒ 水面に浮かんだキュウリを包丁で切る
そして。
この
「包丁試し3本勝負」から
次のように
ストーリーが進んで行きます。
(1)「包丁試し勝負」
場所:東京・不忍池包丁塚前
対戦:塩見味平 VS 仲代圭介
(2)「点心礼勝負」
場所:愛知・熱田神宮境内
対戦:塩見味平 VS 団 英彦
(3)「荒磯勝負」
場所:静岡・焼津の荒磯の板場
対戦:塩見味平 VS 鹿沢練二
(4)「カレー戦争」
場所:東京・ひばりヶ丘
対戦:塩見味平 VS 鼻田香作
(5)「全日本ラーメン祭り」
場所:札幌・雪まつり会場
対戦:塩見味平 VS 柳 大吉ほか
もう
お理解りですよね。
そうなんです。
包丁人味平は
単なる料理漫画ではなく
『料理バトル漫画』なんです。
古くは
「美味しんぼ」や「ミスター味っ子」、
ジャンプでは「食戟のソーマ」など。
すっかり
漫画のジャンルとして
定着している「料理バトル」。
その元祖が
この「包丁人味平」なんです。
料理バトルの元祖
包丁試し勝負が終わった後
味平はキッチン・ブルドッグを離れ
いわば
「流れの料理人」として活動することに。
ですから、前のほうで述べた
「さすらいの料理人漫画」という表現も
当たってはいます。
しかし
料理そのものが中心ではなく、
勝負(バトル)が
メインとなっている点が
世の少年たちに受けた要因
なんでしょう。
いつの時代も
週刊少年ジャンプは
子供たちの心をつかむ術を
心得てますね~。
さらに
料理の味などについての
表現や批評が
最小限に止められていること。
「料理の味を競う」バトルと
「料理人としての技能を競う」バトルの
2つのパターンがあること。
この2点により
勝敗が分かりやすかったのも
少年誌で受け入れられた
理由と言えます。
加えて
① 次々と現れる料理人たち(ライバル)
② 勝つための特訓・ヒント探し(成長)
③ 周りの人たちの協力(仲間)
これら
人気バトル漫画に欠かせない要素も
しっかりと配合。
料理を題材にした
作品でありながら
『王道バトル漫画』としても
楽しめてしまうのが、
本作「包丁人味平」の
おもしろさなんです。
【包丁人味平】考察 ② バトルストーリー
それでは続いて
包丁人味平の料理バトルの内容を
ストーリーに沿って紹介していきます。
さっきも書いたとおり
本作の料理バトルは
「料理の味を競うもの」と
「料理人としての技を競うもの」があります。
これは
原作者である牛次郎先生の手腕が大きく
どちらも
とても楽しめる内容になっていますよ。
包丁試し勝負(塩見味平 VS 仲代圭介)
味平が行う最初の料理バトルが
この「包丁試し3本勝負」。
前の章で少し触れたように
この勝負は3回戦。
①「氷祭り」
⇒ 10分間で氷の彫刻を造る
②「火祭り」
⇒ アイスクリームのフライを作る
③「刃物祭り」
⇒ 水面に浮かんだキュウリを包丁で切る
まぁ、氷の彫刻を造るのが
料理の腕に関係するのかどうか
知りませんケド…
料理人の腕を競うバトルですね。
最初の対決「氷祭り」では
ノミを使って氷を削り
「氷の白鳥」を造ります。
どちらがより
美しい白鳥を造れたか?の勝負。
次の「火祭り」は
元々アイスクリームのフライを
作るはずだったのが変更され、
「アイスクリームの壺あげ」
という料理を作るバトル。
このアイスクリームの壺あげは
「何個作れたか?」で個数を競います。
(©牛次郎、ビッグ錠/包丁人味平)
最後の「刃物祭り」は
水を張ったボウルにキュウリを浮かべ
いかに水面を揺らさずにキュウリを切るかの
包丁技勝負。
料理人としては素人同然の味平と
ベテラン料理人・仲代との戦いは、
「団 英彦」という
料理人の登場により
第4戦・潮(うしお)勝負にまで
もつれ込むことに。
(©牛次郎、ビッグ錠/包丁人味平)
潮勝負は「味の勝負」、
純粋に料理人としての実力が
モノを言います。
さて
勝負の結末やいかに…。
点心礼勝負(塩見味平 VS 団 英彦)
味平の最初のバトル
包丁試し勝負に登場した
「団 英彦」と戦うのが
次の「点心礼勝負」。
団英彦は
超一流ホテルの調理部長を務める
超一流のシェフ。
「点心礼」などと
意味が分からない名前が付いていますが
勝負の内容は「肉の宝わけ対決」です。
いかに早く
そしてきれいに肉をさばけるか
(区分けできるか)で争われます。
(©牛次郎、ビッグ錠/包丁人味平)
この勝負のために
味平が特訓する場面や、
特訓のすえ身に付けた
「白糸バラシ」、「二刀仕上げ」といった
必殺技(?)も必見。
ただし
肉の宝わけ勝負では決着がつかず
区分けした肉を使った
料理対決にまで発展します。
果たして
超一流ホテルの超一流シェフに
味平は勝つことができるのか!?
荒磯勝負(塩見味平 VS 鹿沢練二)
団英彦との点心礼勝負が終わったあと
無法板の練二(鹿沢練二)と
静岡県・焼津市にて
「荒磯勝負」に臨む味平くん。
荒磯勝負とは
荒磯の板場と呼ばれる
潮が渦巻く海上を舞台に、
小さな屋形船の上で
「大海荒造り」という
マグロの刺身料理を作る勝負です。
このバトルにあたって
味平が
克服しなければならないことは2つ。
1つは、激流渦巻く海上
しかも船の上で
料理を作らねばならないという
過酷な条件を克服すること。
もう1つは
味平自身の「魚アレルギー」を
克服しなければならないこと。
料理人なのに
「魚アレルギー」って
致命的ですけどね(笑
このエピソードの前半部分は、
これらを克服する味平の姿が描かれ
後半部分で料理バトルが描かれています。
しかし
「マグロの刺身料理を作る勝負」だと
思い込んでいた味平に
大きな落とし穴がっ…。
勝負の方法が
刺身料理ではなく
「荒磯焼き」という「焼き魚料理」に
変更されてしまうのです。
てっきり
刺身料理だと思い準備していた味平。
窮地に陥った彼が
焼き魚料理に対してとった奇策とは?
カレー戦争(塩見味平 VS 鼻田香作)
静岡での荒磯勝負を終えた味平は
横浜の港で働く
日雇労働者の中にいました。
ここから東京へと舞台を移し
長い長~い「カレー」のエピソードが
描かれることになります。
当エピソードの料理対決は
「塩見味平 VS カレーの天才・鼻田香作」
というカレー対決の図式。
ただストーリーとしては
「デパート(会社)VS デパート(会社)」
という大きな図式で描かれています。
※ カレー「戦争」と呼ぶのはそのため。
簡単に言うと
味平と鼻田が
それぞれのデパート(会社)に雇われ
カレー店を出店。
どちらが
美味しいカレーを作って
お客さんを多く呼べるか?
の対決になります。
そこに
経営者と料理人、暴走族、日雇労働者、
ラーメン職人、他のカレー店などが
それぞれの思惑で参戦。
なかなか
複雑な内容となっています。
そんな中
料理人である味平は
「誰が食べても美味しいカレーライス」
を作ることを目的に邁進。
味平の最終目標である
「誰もが食べられる安くてうまい料理」
を作るための1つの試練として
この「カレー戦争」は描かれているのです。
このエピソードには
- どんぶりカレー
- お雑煮カレー
- ミルクカレー
- ブラックカレー
- 味平カレー など
さまざまなカレーが登場。
それらも
見どころの1つと言えるでしょうね。
最終的に味平がたどりついた
「究極の味平カレー」とは?
カレー戦争に終止符を打つ
「ブラックカレー」の秘密とは?
長~いエピソードですが
最後まで目が離せませんっ!
(©牛次郎、ビッグ錠/包丁人味平)
全日本ラーメン祭り(塩見味平 VS 柳 大吉、石田鉄竜など)
最後は
舞台を札幌に移しての
「ラーメン対決」。
日本人の大好きな
『カレー』と『ラーメン』を
最後に持ってくるなんて流石です、
牛次郎先生(笑
このラーメン対決は
最後のバトルにふさわしく
とても読みごたえがあって
面白いエピソードですよ。
札幌の雪まつりにあわせて
開催される
「全日本ラーメン祭り」。
参加者40名を超える
ラーメン日本一を決める戦いに
味平が参戦します。
① 第一次予選:スープ対決
⇒ 上位20名が通過
② 第二次予選:麺対決
⇒ 上位10名が通過
③ 特別戦:1対1の麺対決
⇒ 勝った方が決勝進出
④ 決勝戦:ラーメン対決
⇒ 優勝者が日本一
上記のような対決を行い
真のラーメン日本一が決定。
全国から集まった
ラーメン界の猛者たちを相手に
味平は日本一になれるのか?
個人的に
このラーメン祭りは
スゴク記憶に残ってて、
二次予選の麺対決で
味平が作った「味平麺」には
子供ながらに衝撃を受けました。
味平が
どんな麺を作ったのか?は、
読んでからのお楽しみ♪
料理バトルの醍醐味
このように本作では
さまざまな料理対決が行われますが
全ての料理バトルに
共通していることが2つあります。
1つは
対決する料理や技に対して
きちんと解説がついていること。
大袈裟な表現や批評ではなく
あくまでも説明(解説)。
TV中継され
解説者が説明することもあるし
審査員や観客が説明することもあり。
これが料理や食材などに
詳しくない少年読者でも
すんなり料理バトルの世界に入っていける
要因となっています。
この形式は
後の料理バトル漫画のすべてに
受け継がれていますね。
そしてもう1つは
対決のたびに
料理人としての味平が成長すること。
ジャンプの代名詞である
「王道バトル漫画」は、
ライバルたちとのバトルを通じて
主人公が
より強く・大きく成長していく姿が
描かれます。
本作も、駆け出し料理人である味平が
多くのライバルとの料理対決を経て
料理人として成長していく姿を
王道バトル漫画さながらに描写。
さらに
ライバルに勝つために努力し、工夫し
周りの人たちに助けられながら成長する姿。
これは
「努力・友情・勝利」をコンセプトとする
週刊少年ジャンプにピッタリですよね。
最期は
「誰もが食べられる安くてうまい料理」を
作ることを究極の目標とする味平が、
「外国人が食べてもうまい料理」を作るため
豪華客船のコックとして
さらなる修行の旅に出るところで終了。
味平の旅(戦い)は
これからも続いていく…
そんな終わり方です。
(©牛次郎、ビッグ錠/包丁人味平)
ということで、以上が
「包丁人味平」の考察でした。
漫画に限らず
どんなジャンルであれ、
その分野で
「史上初」の偉業を成し遂げた人は
歴史に名を残します。
この「包丁人味平」という漫画は
作品自体の面白さもさることながら、
漫画史上はじめての
「料理バトル」を描いたところが偉大。
後の作品に大きな影響を与えた
という意味でも
「名作」として
語り継がれるべきでしょう。
そんな昭和を代表する傑作漫画を
味平の作る料理とともに
楽しんでいただけたら幸いです。
昭和の「情熱」は、令和の「AI」へ
さて、今回とりあげた
『包丁人味平』ですが…
もう毎回
書いてますケド
昭和の漫画は
とにかく「ヒロイン不足」。
本作にも
ヒロインらしいヒロインは
登場しません。
味平くんのバトルを
そばで見守るヒロインがいても
決してジャマにはならなかったでしょう。
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