今回は、週刊少年サンデーの黄金期終盤
に連載されていた作品を紹介します。
1980年代前半から中頃にかけてのサンデーは
「うる星やつら」や「タッチ」を筆頭に
有名な漫画が多かったため、
実は隠れた名作の宝庫でもあったりします。
そんな時代に描かれた
原秀則先生の高校野球漫画が、
本作「ジャストミート」。
同時期に連載され、
同じ高校野球を題材にした「タッチ」とは
真逆の路線を突き進む
空想的野球漫画の魅力をご堪能ください。
ジャストミートの作品データ
【作品概要】
目立ちたがり屋の主人公たちが所属する
高校野球部が甲子園出場を目指す野球漫画です。
が。
チームプレー?
仲間のため?
監督に恩返し?
…ハァ?
なに言ってんの?
そんなの関係ねぇ~!
目立ったもん勝ちだぁ~!
ある意味ハチャメチャな野球漫画ですけど、
面白いですよ。
【作品データ】
作品名 | ジャストミート |
作者 | 原秀則 |
連載誌 | 週刊少年サンデー(小学館) |
連載期間 | 1984年(昭和59年)~1987年(昭和62年) |
単行本 | 全19巻(文庫版は全11巻) |
電子書籍 | あり |
ジャストミートのおすすめポイント①(空想的野球漫画)一部ネタバレあり
最初に、本作「ジャストミート」のストーリーを
かいつまんで説明するとこうなります。
個性的な高校野球部が
「甲子園に出たら目立つから」
という理由だけで 甲子園出場を目指し、
挙句の果てには
甲子園で優勝してしまうという夢のような物語。
本作を評する際に、
「ギャグ野球漫画」や「コメディー野球漫画」
などの表現が使われることが多いのですが、
この漫画を一言で表現するなら
「空想的野球漫画」
という表現がぴったり。
もちろんお笑い要素もありギャグ・コメディー
という表現も間違ってはいません。
でも「ジャストミート」の魅力は、
笑いではなく次の点にあるんです。
【空想的野球漫画たる所以】
- 荒唐無稽な舞台設定・キャラ設定
- 高校がビルに囲まれた都会のど真ん中にある。
- グラウンドが内野しかない。
- 野球部員は9名しかいない。(全員1年生)
- もともと甲子園は目指していない。
- 甲子園に出ればTV中継やマスコミ取材などで「目立てる」という理由だけで、甲子園出場を目指す。
- TV中継がある・女の子が見ている・ご褒美が貰えるといった不純な動機でしか頑張らない。
- 監督が「元プロ野球選手」であるが、そのことにさほど意味はない。
- チームプレー、チームワーク、組織力や友情などの要素は皆無。
- 練習しなくてもキャラの才能(個性)と運とノリだけで勝ててしまう。
などなど。
全くリアルさの欠片もない設定が本作の魅力。
登場キャラクターについては、後ほど紹介します。
また試合展開や相手チームもハチャメチャ。
ただのピッチャーフライかと思われた打球が
伸びに伸びてホームランになったり。
負傷した選手の代わりに
女の子が変装して試合に出たり。
助っ人外国人のピッチャーがいるチームや
筋金入りのヤンキーたちが率いるチームが
甲子園に出てたりします。
(©原秀則/ジャストミート)
「こんな選手がいたら面白いな…」、
「こんなチームがあったら面白いな…」、
「こんな試合があったら面白いな…」
という空想のちょっと上を行く内容
となっているんですね。
そして、あれよあれよという間に勝ち進み
甲子園で優勝してしまうのも、
漫画ならではの爽快感を醸し出しています。
このように、現実では絶対にありえないような
「空想的高校野球」が
コメディータッチで描かれているんですけど…。
ここまでが、本作の「第1部」。
ジャストミートは2部構成になってまして。
第2部は、第1部とはうって変わった内容
となります。
ジャストミートのおすすめポイント②(本格的野球漫画)
2部構成になっていると言っても、
明確に線引きがされているわけではありません。
なので、甲子園で優勝するまでを「第1部」、
その後、最終巻までを「第2部」として進めます。
○部構成でストーリーが進む漫画はよくあるので
特に珍しくはないんですけど、
本作の2部構成は
他の漫画とはちょっと趣が違っています。
【2部構成】
本作「ジャストミート」は、
第2部になると「作風」が変わります。
ガラっと変わるわけではなく、
徐々に徐々にコメディー路線から
「シリアス路線」に変更されていく感じですね。
もちろん高校野球が軸になるのですが、
女子ソフトボール部や
新入部員などの新キャラも登場し、
「本格的野球漫画 + ラブロマンス色」
が強くなっていきます。
さらに第2部の後半では、
第1部で皆無だった仲間を思いやるシーンや
信頼し合うシーンなども描かれて、
ラストに近づくほど「ホントに同じ漫画?」
と思ってしまうシリアス路線に
方向転換されますよ。
第1部の最後(甲子園優勝)も良かったですけど、
第2部のラストは「感動的」
と言ってしまってもイイでしょう。
本格的野球漫画だったっけ?
という内容で進む第2部が、
どんなラストを迎えるのか?
は…読んでからのお楽しみ♪
(©原秀則/ジャストミート)
ちなみに、この辺りの「シリアス野球漫画」は、
原先生が後に連載する「やったろうじゃん!!」
に繋がっていきます。
と、ここまで紹介したように、
本作「ジャストミート」は、
1つの漫画でコメディー&シリアスの
2つのお話しが読める異色の作品です。
1つで2度美味しいとまでは言いませんが、
第1部で大いに楽しみ。
(©原秀則/ジャストミート)
第2部で大いに感動してくださいね。
(©原秀則/ジャストミート)
ジャストミートのおすすめポイント③(メインキャラクター)
それでは最後に、
本作のメインキャラクターである9名の野球部員
とヒロイン2名を簡単に紹介して、
終わりたいと思います。
橘二三矢(たちばな ふみや):ピッチャー
第1部・第2部を通しての
本作のダブル主人公の1人。
(第2部ではメインの主人公)
決め球は「フォークボール」。
でも、三振を取って目立ちたいがために
ほぼフォークボールしか投げません。
野球部のエースなので
第1部でもかなり目立っていますが、
第2部は「二三矢の物語」になります。
坂本天馬(さかもと てんま):センター
本作のダブル主人公の1人で、
第1部のメインの主人公。
無類の足の速さが売り。
ピッチャー前のバントでも
セーフになるほどの俊足を誇ります。
空想的野球漫画なので、
信じられないくらい速いです。
第2部でもソコソコ目立った活躍をしますが、
どちらかというと第1部の主人公
と言えるでしょう。
野球部の中でも群を抜いて目立ちたがり屋なのが、
この天馬と二三矢ですね。
音無譲(おとなし ゆずる):キャッチャー
小柄ながら野球部一の強打者で、
本作の名脇役の1人。
ストレートにめっぽう強く、
どんなに速い球でも直球であれば打ち返します。
(空想ですから)
その代わり変化球は全く打てません。
(空想ですから)
第2部では、二三矢の女房役として
イイ役を演じますよ。
麻見省吾(あさみ しょうご):サード
長髪で無口、野球部イチのモテ男。
(一応、キャプテン)
守備の名手で鉄壁の守りを誇ります。
彼も名脇役の1人ですね~。
ただ当初はそれほど目立ったキャラでは
ありませんでした。
第1部の途中から急に出番が増えるので、
女性読者からの人気が上がったんだと思います。
田中一郎(たなか いちろう):レフト
地味な存在の寡黙な男。
しかし秘めた野球の実力は相当なものがあります。
部内一の強肩を誇り、
リリーフピッチャーとして登板することも。
脇役の中では最も活躍するキャラクター
かもしれません。(第1部)
以上の5名が、本作のメインキャラクター。
他の4名はチョイ役と言ってイイ存在感なので、
簡単に紹介しますね。
守口要(もりぐち かなめ):ショート
チームで一番目立たない存在の男。
生来の影の薄さ
から存在すら忘れられてしまいます。
(ただ、本人は目立ちたいと思っている)
ショートという守備の要でありながら、
打球の大半をサードの麻見が処理してしまうため、
守備でも目立つことがないという悲しい設定。
でも、ちょこちょこ活躍する場面もあります。
柏原太(かしわばら ふとし):ファースト
野球部イチの大食漢で、かなりのパワーの持ち主。
しかし、悲しいかな
野球でそのパワーが活かされることは
ほとんどありません。
ぽっちゃり体系ではあるものの柔軟性があり、
開脚してファーストを守るにはピッタリの選手。
小林健(こばやし けん):ライト
チーム一の長身ですが、
上の守口よりも
目立たない存在として描かれています。
特長は、長身を活かした守備と外角打ちくらい。
前述したヤンキーチームとの試合で、
ちょこっとだけ活躍。
左右田秀樹(そうだ ひでき):セカンド
抜群の野球知識を持ち、
相手チームの情報分析が得意なメガネくん。
ただし、その知識や情報分析が活かされることは、
ごくごくたまにしかありません…。
このカルテットについては、
作中でピンポイント的に活躍することはあっても、
全編通じてはやはりチョイ役の域を出ないキャラ。
そしてこの4人よりも重要なのが、
本作に登場するヒロイン2名です。
栗原美和子(くりはら みわこ)
第1部のヒロイン。
野球については全く無知な
天然系の可愛らしい女の子です。
第1部は、主人公である天馬と
ヒロインである美和子の青春ラブストーリー
という側面もあるんですね。
甲子園大会の期間中に、
天馬は美和子ちゃんと「ある約束」をします。
その約束を果たせないまま、
決勝戦を迎えた天馬は…。
という感じで第1部は
クライマックスに向かっていきますよ~。
森村美樹(もりむら みき)
女子ソフトボール部のキャプテンとして、
第2部から登場。
第2部は、主人公である二三矢と
ヒロインである美樹のラブストーリーが
物語の軸になります。
この2人の恋の行方が、
第2部のクライマックスに大きく影響してきます。
ということで、長くなってしまいましたが、
本作「ジャストミート」のおすすめポイント
を紹介してきました。
コミカルな空想的野球漫画と
シリアスな本格的野球漫画の
2本立てのストーリー。
プラス、個性的なキャラクターで描かれる本作は、
原先生の代表作だと思っています。
全盛期の週刊少年サンデーを支えていた
名作の1つです。
ぜひその面白さをご自身の目確かめてくださいね。
さて、そんな本作「ジャストミート」は
電子書籍化されています。
わたしがふだん利用している電子書籍通販サイト
「ebookjapan」で試し読みが可能。
「ジャストミート」に興味を持たれた方は、
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